画家 山口功
トップ > コンセプト

「楽描展」RAKUGAKI.

個展の時は、常にこの言葉を用います。絵は楽しいもので有りたい。
画面の中に歌心.詩(ポエム).遊び心、風を、匂いを表現したい。
そして、心の奥底ではブルースを、斯く願い乍ら上記の表題を自身のコンセプトとしている訳です。
顔料については一応書いてありますが青墨・水彩・油彩・クレヨン・コンテ・色鉛筆。 その他を混合するので分類できません。

要はどんな材料で描いたのか、ではなく如何に心を打つ作品を描く事ができるかということのみを考えています。
私が思うに絵の基礎とは、形を定めるのでもなく、色や光陰に捉はれるものでもない。
目で物を描く前に心で物を捉え、読む事だと考えています。
詩の一節に涙し、小説の一行に心を打たれ、音楽のワンフレーズに心を震わせる感性を持つ事。
風を感じ、月や星.陽の陰影と輝き、海・川のざわめく色に心の目を開くこと、
これらの要素が綯い混ぜになったものと思います。

私はいわゆる芸大・美大と呼ばれる絵の学校へ行った事はありません。
私に絵の何たるかを最初に教えて下さったのはドクターでした。
大阪の外科病院長だった、故中村英夫先生です。ドクターだから先生ではなく、正に人生の、絵の先生だからです。

絵の勉強をするなら東京へ行けと背を押して下さったのも中村先生、
花は花弁から茎がぶら下がっているのでなく、目に見えない地中の根から水と養分をもらった茎の先にパッと命を咲かせたのが花。
それが何の花だろうが種類は何でも良い。そのパッと開いた命。
それが画面に出てこそ、花の絵が描けたという事、会話の中で、学会の度に食事に招んで頂き、共に銀座の画廊で有名と云われている画家の作品を観て歩き乍ら、教りました。
人物を描くには先ず骨格と筋肉の成り立ちを学べ、細かく見て、大胆に描けと云われました。

第2の先生は20才の時に知り合った阿部合成先生です。
ヌードデッサンの勉強の中で教わった事は表面的な形を描くことではなく重要なのは中心(重心)を捉える事。
形を描く前に形を見ろと云って彫刻、主にブールデル.緑山.モディリアーニを勉強した事が短い期間だったが自分の今を支える骨子になっています。

芸術と一般的な意味で使われている言葉は好きではありません。
芸術家でなく一流の三文絵描きになる事が私の理想です。
魚をいかに手早く、キレイに料理するか、美味しい農作物をいかに効率良く育てるか、無駄な労力を省いて必要な分だけの穴を掘るか、などの様に私も絵描き職人でありたいのです。
そして、どんな職業であれ、どんな生き方をしている人達であれ、世の中の人は全て自分にとっての師だと思っています。

よく云われる様に人生そのものが旅です。
色々な人々に出会い、見、感動し、得て、無駄は削ぎ落として行く。
自分もまさにその途上にいます。これからどんな出会いがあるのかを楽しみに歩き続けて行こうと思います。